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2005年12月 8日 (木)

12月8日という日によせて

  中1の時、友だちと映画館に角川映画の「人間の証明」を観にいきました。
その中で、日本の警察から捜査の協力を求められたニューヨークの刑事が言ったセリフに、当時の私はたいへんな衝撃を受けました。

「日本人に協力するなんて、本当は気が進まない…。弟を真珠湾で亡くしているんだ…。」

祖父母も、両親も、叔父叔母も、みな戦争を知っていました。そんな中で育った私は、戦争でいかに日本が傷ついたか、戦場はどんなに凄惨であったか、銃後の暮らし(直接戦闘には加わらない一般の人々の暮らし)がいかに苦しいものであったかという体験談を、幼い頃から聞いて育ちました。

そんな私にとって、同じ戦争でアメリカ人にも傷ついた人がいたのだという事実に初めて気づくきっかけになったのが、そのセリフだったのです。

戦争とは、お互いに傷つけあうものなのだという、あまりにも当たり前のことに。

  

  おとなになってから、ハワイに行った時、なんとしても真珠湾に行ってみたいと思い、地図を広げて路線バスで訪ねていきました。

真珠湾は、海水浴客で賑わうワイキキの浜辺の華やぎとはうってかわって、人もまばらでひっそりとしずまりかえっていました。

日本人(とすぐにわかるかどうか、わかりませんが)が真珠湾になど行ったら、さぞや“針のむしろ”のような思いをするのではと内心びくびくしましたが、行き先を尋ねたバスの運転士さんにも、乗り合わせたアメリカ人と思われる人々にも、真珠湾で出会った人々にも、特にどうといった態度はとられませんでした。

静かな静かなその場所は、その何十年か前の冬に、悲惨な戦争の火蓋が切られた場所であったことなどうそのように、夕日に美しく照り映えていました。

  

  私たちの世代は、戦争を知りません。

ですが、終戦からこちらに60年という時間の軸が伸びた今、自分の生まれた年をその軸の中に置いて見ると、ずいぶんと戦争のあった時代のほうに近いことに気づきます。

私たちは、戦争を知る人々と共に暮らし、時には(またか…)と思いもしながら生の話を聞き、育てられた、最後の世代となるかもしれません。

かなしみを繰り返さぬよう、それを次の世代に伝えていくという重責を感じることがあります。

  

  私の知っている子で、日本とアメリカのふたつの国籍を持つ子がいます。
あと何年かで、どちらかひとつを捨てなければなりません。

どちらを選んでもいいと、日本人の親御さんからは言われているようですが、お母さんからは「たったひとつだけ」お願いごとをされているそうです。

「アメリカ人になりたいならなってもいい。戦争にだけはいかないと、約束してくれるなら。」と。

  大切な人を戦場に送り出したくなどない気持ちは、それを口にできるかできないかの違いだけで、いつの世も変わらぬものなのだと思います。

       

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コメント

 恭子さんへ
  期せずして、貴女と同じく、この12月8日に感じていることを、自己のブログにも書きました。

  やはり、どんな場面においても、戦争はどの立場の人にとっても、不幸な選択ですよね。

  毎年、誰の下にもステキなクリスマスが迎えられますように…(-人-)

投稿: にいたん | 2005年12月12日 (月) 19:32

にいたんへ

にいたんの12月8日の記事はアップされてすぐ拝読させていただきました。
「トラトラトラ」とか「ニイタカヤマ…」とか、私も同じような年頃に知りました。
今の子は知らないでしょうね…といいますか、“私たち”が伝えなければ、知ることはないのかも、と、最近そんなふうに思うのです。

私のブログ、更新が滞り、8日のことも8日からはずいぶんと遅れてから書きましたのに、お読みくださりどうもありがとうございます。
トラックバックもありがとうございます。私も張らせていただきました。

小中学生くらいで扱う国語のテキストには、「平和」の対義語が、ずばり、「戦争」になっていたように思います。

この度このような機会に、思っていることが綴れてよかったです。
普段はなかなかこういった話題は口にできなくて・・・(^-^;

どうもありがとうございました。

投稿: 恭子 | 2005年12月13日 (火) 09:04

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» 12月8日に思う [にいたんのリスニングルーム]
  あなたは12月8日と聞いて、何を思い出しますか? (以下敬称略)SMAP稲垣 [続きを読む]

受信: 2005年12月12日 (月) 20:49

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